最近怒りっぽくなってきたなとか、少しのことでイライラするなとか、ついカッとなってしまうなと思うことはありませんか?怒りの感情は決して気分の良い物ではありませんが、怒りは前向きな変化を起こすためのきっかけにもなり得ます。ここでは、怒りを健康的に活用する方法をご紹介します。
怒りっぽさのワケ
あなたがスーパーのセルフレジで並んでいる時、中年女性が慣れない手つきでレジの支払いをしているとします。それをみてあなたはどう思うでしょうか。おそらく「不慣れなんだな」と思う程度でしょう。大抵の人は、そんなことで強い怒りは感じないはずです。しかし、実はさまざまな理由で、私たちは段々と怒りを感じやすくなっています。例えば、SNSの発達によって怒りをぶつけやすくなったり、法律の不平等やLGBTQ+に関する立場、また文化的に過激主義の人も増えていたりと、怒りを感じる場面が増えてきているのです。そしてコロナ禍において外出自粛がなされ、リモートワークが増えたり周囲との関係に変化があったりしたことから、ここ数年でさらに、怒りを感じる場面が増えたと言われています。またいくつかの調査において、男性よりも女性の方が、ストレスや疲れを感じやすく、さまざまな要因が怒りに変わってしまいやすいということも示唆されています。
ストレス社会と怒りの対峙
ストレスと怒りは全くの別物です。しかし、変化がみられないストレス社会に長く生きていると、その怒りに対して第三者が「ポジティブになろう」とか「瞑想すればストレスがなくなる」などといった発信をしているのを見ると、余計に怒りの感情が出てきてしまうことがあります。もちろん軽いストレスに対してはそのような方法で上手くいく可能性は高いでしょう。しかし例えば、誰かの手によって愛する人が亡くなってしまったり、大好きな自然環境が破壊されたりといったことに対する「打ちのめされるようなストレス」は、そういった方法で癒すことはできません。極端な例だと思うかも知れませんが、想像してみれば簡単には癒されないことがわかると思います。これらを解決するためには、社会的な変化を起こすしかないのです。ここでお伝えしたいのは、怒りが必ずしも悪い感情ではないということです。ポイントは、怒りという感情は「自分の中でうまく行っていないことからの危険信号である」ということです。けれど私たちは怒りの感情によって発せられる危険信号をうまく察知できないので、少し嫌なことがあると、周囲に八つ当たりをしてしまったり、甘いものに過剰に手を伸ばしてしまったりするのです。
女性の怒りの隠れた真実
実は、男性よりも女性の方が怒りを「好ましくないもの」として認識しているそうです。怒っているという事実を認めたり、それを見せることを好ましくないと考えてしまうのです。だから、感情のために使っているエネルギーのほとんどを、怒りを鎮めたり隠したりすることに使ってしまっています。よく、怒っているかを聞かれた時に「怒っていない」「大丈夫」と即座に答える女性がいると思いますが、それが良い例です。女性は古くから、怒りを許すことが期待されているのです。さらに、怒ることによって自然に目元や顔が歪んで見えるため、女性は怒った顔をすることを自然と拒んでいるのです。興味深い研究結果があります。怒りを外に表現することに対して、男性がそれをするよりも、女性の方が周囲の人は否定的に反応するというものです。怒りの感情をぶつけられた時に、男性よりも女性の方が信用を失いやすいともされています。だから女性は無意識的に、怒りを外に表現することをやめているのかも知れません。女性はその怒りの感情をどうしているかというと、悲しみや失望、フラストレーション、ストレスとして変換しているのです。もう一度言いますが「私は怒ってはない」という女性の主張は、「怒っている」という意味になります。女性自身は、失望していたりストレスや不安を感じているのだと思っているかもしれませんが、それはただ感情が変換されているだけで、本当は、怒っているのです。何に対して怒っているのかを知りたければ、少し会話をしてみてください。ストレスを感じているだけだという場合には、何がストレスなのかを聞くのです。子供の世話が大変だとか、ローンの支払いが厳しいだとか、仕事で疲れているとか、色々なストレスの種が出てきますが、もう少しだけ掘り起こしてみると、根本は怒りの感情であることがよくわかると思います。
怒りが体に与える影響
長年にわたり、怒りの感情が健康に大きく関係しているということが科学的に証明されています。特に怒りは、心疾患との関連が強いと言われます。ある研究によれば、頻繁に、そして爆発的な怒りを感じる人が、その2時間後に心臓発作を起こすリスクは、通常の約5倍。そして脳卒中のリスクが3倍以上になることが分かっています。怒りが心臓発作を起こすというわけではありませんが、怒りや不安を抱えた状態の時、私たちは闘争モードにあるため、血管が収縮して血圧が上昇してしまうのです。また筋肉も収縮してしまうため、慢性的な背中の痛みや緊張性頭痛を引き起こしてしまう可能性も高くなります。さらにある研究においては、2型糖尿病のリスクも高めると示唆されています。そして、心理的な状態、特に不安やうつ病、摂食障害などは、先述の「表現できない怒り」と結びついていると考えられています。またアジアにおける文化的な傾向のせいもありますが、アジア文化は西洋文化よりもはるかに「集団主義的」です。そのため集団を乱さないように、怒りを抑え込みやすい傾向があるのです。そしてそれは、心理的な影響だけでなく、身体的な部分にも影響を及ぼします。例えば胸が押し付けられるような感覚や、呼吸困難、顔が暑くなるような感覚、口の渇きなどです。これらに苦しむ人たちは、怒りを爆発させることよりも、受動的な攻撃性や自己非難に傾くことがあるようです。怒りを抑え込むことが、特定の健康問題に結びついていることを示す研究データはそれほど多くありませんが、抑え込んでいて症状が出ているということは、健康的な解決ができていないということですから、何かしらのネガティブな影響があることは確実でしょう。