気温の変化が大きい季節の変わり目の時期、注意が必要になるのが体温の調整のために自律神経が過剰に働き、疲労がたまる「寒暖差疲労」と呼ばれる症状です。専門家は、コロナ禍のリモートワークや外出の減少で自律神経が乱れていると、「寒暖差疲労」が起きやすくなるとして注意を呼びかけています。
寒暖差疲労メカニズムは
寒暖差疲労に大きく関わるといわれているのが自律神経です。改めて基本的な知識をおさらいしておきましょう。
自律神経は、身体を活発に動かすときに働く「交感神経」と、身体を休めるときに働く「副交感神経」で成り立っています。この2つの神経がバランスを取りながら、呼吸や体温、心拍、消化、代謝、排尿・排便などの生命活動に欠かせない機能をコントロールしています。例えば、体温を調整する際は、骨格筋を収縮させることで熱を生み出します。このときに症状として表れるのが「震え」です。また、血管の収縮を促すことで筋肉を硬くして体温を上げます。さらに、発汗によって体温を下げることも自律神経の働きによるものです。交感神経と副交感神経が急激に切り替わると臓器に負担がかかるため、ゆっくりと切り替えなければなりません。しかし、寒暖差が大きい日は、この自律神経の働きが1日の中で何度も急激に切り替わるため、臓器に大きな負担がかかって不調を誘発します。寒暖差疲労は、体の冷えやだるさ、肩こりなど体の不調につながり、前日との気温差や、1日の最高気温と最低気温の差が7度以上あるときに起こりやすくなるということです。さらに、リモートワークや外出の減少で自律神経が乱れていると、「寒暖差疲労」が起きやすくなるといいます。
寒暖差疲労の予防法
寒暖差疲労を予防するために、日頃から次のような行動を心がけましょう。
1,体を温める:寒いときは、血管が表面近くにある、首元や肩甲間部、内腿をカイロやホットタオルなどで温めましょう。ただし、身体を温める行為である運動を行う際は外してください。
2,運動を習慣つける:自律神経のバランスが崩れにくい身体づくりのために、適度な運動を習慣づけましょう。一定のリズムで15~30分程度の運動を習慣づけることで、身体の筋肉が増えて自律神経のバランスが乱れにくくなります。また、ゆっくりと3分歩いて、3分早歩きを繰り返すのを15~30程度続けるのもよいでしょう。この場合、1分につき60~80歩を目安とし、呼吸は2秒で吸って4秒で吐くのを繰り返します。
3,首と肩の筋肉の緊張を緩める:首と肩の筋肉をストレッチすると、筋肉の緊張が緩んで副交感神経が優位になり、自律神経のバランスが整いやすくなります。両手を後頭部に添えて、顔をうつむけることで首の後ろを伸ばしましょう。続いて、ゆっくりと上を向いて首の前を伸ばし、左右にゆっくりと倒して首の横を伸ばします。最後に肩甲骨の周りや腰、背中、太ももの裏、ふくらはぎを伸ばしてください。
4,規則正しい生活を心がける:規則正しい生活リズムを作ることは、自律神経のバランスを整えるために重要です。睡眠時間は7時間程度を目安とし、夜23時から朝6時の間は寝ているようにしましょう。太陽に当たることで、良質な睡眠を促すセロトニンが増加するため、日中はなるべく外出することが大切です。ただし、夏場は熱中症の心配があるため、外出時間帯や外出先などを考慮しなければなりません。食事については1日3食食、栄養バランスの取れた食事を心がけてください。
5,冷たい飲み物を控える:冷たい飲み物は臓器を冷やすため、寒暖差疲労の悪化につながる恐れがあります。暑いときに冷たい飲み物を飲むと急激に体温が低下するため、自律神経のバランスが崩れるとともに臓器に大きな負担がかかります。冷たい飲み物を控えるとともに、身体を温める根菜類や温かい飲み物などを取りましょう。
6,冷暖房器具に頼りすぎない:冷暖房器具に頼ると自律神経が働く機会が減少することで、交感神経と副交感神経の切り替えがうまくできなくなります。食事や服装、運動などで体温を調節できる場合は、そのほうがよいでしょう。ただし、夏の熱中症対策には冷房が推奨されており、冬に室温が18℃未満になると、高血圧をはじめとした健康被害が生じるリスクがあります。適正に使用しましょう。
7,入浴で汗をかくようにする:入浴すると、身体が温まるだけではなく、リラックス効果によって副交感神経が優位になります。なるべく毎日入浴しましょう。38~40℃程度の湯に15~20分程度つかることが基本ですが、利用者さんの疾患によっては温度と入浴時間、入浴方法に調整が必要です。