睡眠中の歯ぎしりと食物繊維の関連

皆さんのクライアントの中に、睡眠中に歯をきしむ、いわゆるブラキシズムに悩んでいる方はいませんか?ブラキシズムとは、無意識のうちに歯を強く食いしばることや歯をこすり合わせることを指します。歯ぎしりはブラキシズムの一形態ですが、ブラキシズム自体は歯を食いしばる行為も含むため、より広範囲な現象とみなされます。つまり、全ての歯ぎしりがブラキシズムに含まれている。というわけです。
また、ブラキシズムは、歯や顎関節にダメージを与え、長期にわたると歯の摩耗、歯の破損、顎の痛みや頭痛などを引き起こす可能性があります。この現象は一般的にストレスや不安と関連付けられていますが、最近の研究では食生活がブラキシズムに及ぼす影響も注目されています。特に、食物繊維の摂取不足が歯ぎしりを引き起こす一因であることが示唆されています。

食物繊維の役割と睡眠の質

では、具体的に食物繊維は、睡眠の質とどのようなかかわりがあるのでしょうか?
食物繊維は、消化されにくい炭水化物の一種であり、腸内環境の改善、血糖値の安定、さらには心血管疾患のリスク低減に寄与することが知られています。食物繊維には主に二種類あり、水溶性と不溶性繊維がそれぞれ異なる機能を持っています。水溶性繊維は水に溶けてゲル状になり、消化を遅らせることで血糖値の急激な上昇を防ぎます。一方、不溶性繊維は腸を刺激して便通を良くし、腸内環境を整える効果が期待できます。
岡山大学の研究によると、食物繊維の摂取が少ないと報告された人々は、睡眠中の歯ぎしりを行う傾向にあることが明らかになりました。この結果は、食物繊維がただ消化器官に影響を与えるだけでなく、神経系や筋肉の機能にも影響を及ぼす可能性を示唆しています。食物繊維の摂取不足が、ストレスホルモンのバランスの乱れや、筋肉の緊張状態を悪化させることが、歯ぎしりという形で現れるのかもしれません。

睡眠は主に二つの基本的なタイプ、レム睡眠(REM sleep)とノンレム睡眠(Non-REM sleep)に分かれており、これらが睡眠中に周期的に交互に現れます。各睡眠サイクルはおおよそ90分から120分で一周し、一晩に数回繰り返されるため、睡眠の質が日中の活動に大きな影響を与えます。特にノンレム睡眠は、全睡眠時間の約75%を占め、身体的回復に不可欠です。このノンレム睡眠はさらに三つのサブステージに分かれており、深いノンレム睡眠(ステージ3)の間には体の修復活動が最も活発に行われ、成長ホルモンの分泌が増加します。食物繊維の摂取不足がノンレム睡眠の質に影響を及ぼすというのは、こうした睡眠の回復機能にも悪影響を与える可能性があるからです。食物繊維が不足すると、消化器系の健康が損なわれ、それが睡眠の質を低下させることに繋がると考えられています。ノンレム睡眠の質が低下すると、筋肉のリラクゼーションが十分に行われず、結果的に過緊張が発生しやすくなります。また、ストレス反応の調節がうまくいかなくなることもあります。これらの因子が組み合わさることで、歯ぎしりが引き起こされる可能性が高まるのです。

それでは、歯ぎしりの減少に効果的で、日常生活での食事改善が期待できる食物繊維にはどのようなものがあるか?見ていきましょう。
食物繊維を豊富に含む食品には、全粒穀物、豆類、野菜、果物などがありますが、具体的には全粒小麦、オートミール、玄米、キヌアのような穀物や、レンズ豆、ひよこ豆、黒豆などの豆類、さらにはブロッコリー、人参、ほうれん草のような緑黄色野菜、リンゴやオレンジ、バナナといった果物が挙げられます。これらの食品を日常的に取り入れることで、腸内環境の改善だけでなく、全体的な健康状態の向上にも寄与し、結果的に睡眠の質を高めることが期待されます。睡眠の質の改善は、ストレスや不安の軽減にもつながり、歯ぎしりの減少に効果的です。また、食物繊維の摂取を増やすためには、以下のような具体的な食事の工夫を心がけると良いでしょう。食事に多様性を持たせるためには、日々の食事に豆類、全粒穀物、野菜、果物をバランス良く取り入れることが重要です。これにより、必要な食物繊維を効率的に摂取できます。また、間食時には高繊維のスナックを選ぶことも大切で、ナッツやドライフルーツ、ホールグレインのバーやシリアルがおすすめです。さらに、加工度の高い食品は繊維が少なくなりがちなため、自然の状態に近い食品を選ぶことが健康を支える上で重要になります。このように食事内容を見直すことで、より良い健康状態を目指すことができます。

岡山大学の研究が示唆するように、食物繊維の摂取は睡眠中の歯ぎしりに影響を与える可能性があります。したがって、この問題に対処する一つの方法として、食事による睡眠の質の改善を試みることは有効です。
ただし、歯ぎしりが続く場合は、医療専門家に相談し、その他の健康問題が関連していないかを確認することも重要です。

食物繊維の摂取と睡眠の質、特に睡眠中の歯ぎしりとの関連についての研究はまだ始まったばかりですが、食生活が全体的な健康に及ぼす影響は無視できません。バランスの取れた食事は、良質な睡眠をサポートし、日々のストレス管理にも役立ちます。このようにして、食物繊維は私たちの健康維持に静かながらも強力な役割を果たしているのです。
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